地方公務員のための情報発信地

公務員、特に自治体職員に関わる情報をオススメの本の紹介とあわせて発信していきます。財政ネタが多めです。

【まちづくり】まちづくりは1階から

活気のいない1階

突然ですが、皆さんの住んでいる、もしくは働いている、学校のある「まち」にあるビルを想像してください。

1階に活気はありますか?

 

大きなビルの1階はエントランスで受付やロビー、エレベーターホールがある程度であったり、1階がシャッター、もしくは寂れた店、駅前ビルの1階はパチンコ店ということも想像されます。

しかし、株式会社グラウンドレベルの田中元子さんは、まちの1階には活気が必要だ、と言います。

活気を制限するパブリックスペース

欧米では、路上でコーヒーやホットドッグを売ったり、花を売ったりと露店がよく見られます。田中さんは、これがまちの活気を作っているのだと言います。

ほかにも、公園でパフォーマーが芸をしていて集まっていたり、ある程度自由にパブリックスペース(公共空間)を使えて、好きなことができて、まちの活性化につながっています。

しかし、日本では、道路の脇でコーヒーを売ろうとすると、道路の占有許可が必要だったり、食品衛生法の定めにより、「屋根付きの三方が囲われた場所に二層式タンク水道の準備」など、かなりの設備を用意しないとということもあり、現実的にかなり厳しいといったことも言われています。

良し悪しはありますが、かつて、大阪道頓堀で長らく営業していた「大だこ」(たこ焼き屋さん)が道路の不法占拠で摘発され、閉店になったこともあります。

 

また、日本は、まちにベンチがあまりない「ベンチ後進国」であり、人が出歩きにくい、といったことも言われています。

 

田中さん自身は、規制は色々あるけど、できることを勝手にやろうという「マイパブリック」を提唱しています。

このブログの読者の皆さんは、まずは身の回りの「まち」の1階を観察してみることから始めてはどうでしょうか?

 

参考書籍

今回紹介した田中氏の書籍です。

 

「マイパブリックとグランドレベル」(田中元子、晶文社、2017年)

難易度★☆☆☆☆

今回紹介した田中さんの取組みとグラウンドレベル、つまり、1階の活性化にどうあるべきか、について欧米の例を用いながら、日本の現状を痛快に書いています。

 明確、かつ、具体的で読みやすさもあります。

 

まちづくりの今後のあり方を考える際にもオススメの一冊です。

 

【公共施設】保育所の用地不足と公園 ー都市公園法と保育所ー

保育所の用地不足

公園についての記事の第2弾です。

近年では女性の働き方の変化もあり、保育所へのニーズが高まっています。

待機児童ゼロ目標を掲げる自治体もありますが、達成は難しいものです。

都市部を中心に保育所が慢性的に不足しており、保育士不足とともに保育所用地の不足が課題になっています。

 

都市公園法と公園の規制

自治体が設置・管理する公園については、都市公園法都市緑地法が関連してきます。
都市公園法でいえば、平成15年の法改正により仮設の占有物件の設置が可能になり、公園内でのイベント開催の道が拓けました。
また、平成16年には公園施設(売店を含む)の設置・管理を民間事業者も行うことができるようになり、公園内に民間事業者が売店を設置・管理することが可能になりました。

 

しかし、現在の都市公園法による規制のもとでは公園内に保育所は設置できません

 

国家戦略特区と公園内保育所

全国的には都市公園法による規制を受けるものの、

東京都では国家戦略特区の活用によって、都市公園の敷地内に保育所等施設の設置に係る都市公園の占用が可能になり、公園内に保育所を設置できるようになりました。

この規制緩和により、東京都では平成29年4月1日から公園内保育所として4園が開設予定です(荒川区 都立汐入公園、世田谷区 都立祖師谷公園、世田谷区 都立蘆花恒春園、品川区立 西大井広場公園)。

 

国家戦略特区での規制緩和の全国展開

国家戦略特区は岩盤規制を緩和していく実験的な手法としても利用されており、今回紹介した東京都と同様に公園内に保育所を設置できるようにする規制緩和都市公園法改正)が全国展開されることが検討されています。

公園に保育所設置、全国で可能に 国交省 :日本経済新聞

 

保育所の用地不足問題と捉えると都市部が中心の課題と捉えられますが、公園の維持管理費低減(保育所設置に伴う使用料等)の観点からは地方においても検討されてもよいのではないでしょうか。

 

参考書籍

公園のマネジメントについて詳しく知りたい方は次の書籍が参考になるかと思います。

 

「RePUBLIC 公共空間のリノベーション」(馬場正尊+Open A、学芸出版社、2013年)

難易度★★☆☆☆

公共空間のリノベーションについて豊富な事例を交えながら解説しています。

 

公園のリノベーション事例役所、学校、図書館など事例を交えながら公共空間のリノベーションの可能性について解説しています。

分かりやすい事例とともにイラスト豊富で非常に読みやすいながらも内容はしっかりとしていて、公共施設等の今後のあり方を考える際にもオススメの一冊です。

RePUBLIC 公共空間のリノベーション

RePUBLIC 公共空間のリノベーション

 

こちらは続編です。

PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた

PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた

 

 

【公共施設】世界一美しいスタバと公園の維持管理 ー都市公園法と民間参入ー

世界一美しいスタバ 

 突然ですが、世界一美しいスタバはどこにあるでしょうか。

世界一美しいスタバは富山市の富岩運河環水公園という都市公園(総合公園)の中にあります。

このスタバの魅力は他の記事に譲る(ググって頂ければ記事はたくさんヒットします)として、ここでは公園の維持管理の観点から公園内スタバについて考えてみたいと思います。

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【公共施設】公共施設マネジメントと公共施設等総合管理計画

公共施設等の老朽化

日本の公共施設やインフラ(以下、公共施設等)は主に1950年代から1970年代の高度経済成長期に多くが整備されました。
これらの公共施設等の多くは整備から50、60年が経過し、更新時期を迎えるとともに老朽化が深刻な状況になっています。 

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【財政】財政赤字は善か悪か

景気対策財政赤字 

政府は景気対策などのために公共事業を行うことがあります。選挙が近づくと、商品券やなんとか手当といったバラマキと呼ばれるような政策が話題になることもあります。

ここで注意したいのはその財源としての借金です。 

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【財政】地方財政と公会計

地方財政の目的

一般的に財政には①資源再配分機能、②所得再配分機能、③経済安定機能があると言われています。

財政政策 - Wikipedia

累進課税を基礎とした所得税は国による所得再配分機能の例として代表的なものです。

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【監査】自治体の内部統制と監査

内部統制と監査の関係

 

前回は自治体の内部統制導入の記事を書きましたが、反響も多く、内部統制へのみなさんの関心と不安の大きさが伺えました。

今回は自治体の内部統制と監査について紹介します。

 

筆者は、今回の自治体への内部統制の導入が将来的には監査制度の改革も想定したものと見ています。

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