地方公務員のための情報発信地

公務員、特に自治体職員に関わる情報をオススメの本の紹介とあわせて発信していきます。財政ネタが多めです。

地方財政と公会計

地方財政の目的

一般的に財政には①資源再配分機能、②所得再配分機能、③経済安定機能があると言われています。

財政政策 - Wikipedia

累進課税を基礎とした所得税は国による所得再配分機能の例として代表的なものです。

 これらの財政の3機能は国によるものが多いですが、自治体も福祉や公共事業などこれらの機能の一部を担っています。

 

地方財政の一般的な仕組みを市民との関係で考えると、

自治体は税金や手数料、使用料などの形で市民からお金を徴収し(地方交付税は直接は国から地方への財源移転ですが、もともとの財源は税金)、

各種証明書発行、ゴミ回収・処理、福祉サービス、公共施設などを通じた市民サービスと公共事業の形で再配分する

と理解できます。

 

特に税金は徴収が強制的であるという性質があり、自治体側はその使い道について「予算」にまとめて市民の代表である議会の承認を得るとともに、

その使い道について「決算」として市民への説明責任が求められます。


歳入歳出決算の限界

予算・決算は歳入歳出というお金の出入り(キャッシュフロー)に着目して、作成されます。

歳入には地方債という将来返済しなければならない借金が含まれ、歳出にはインフラや公共施設の整備という将来の世代に引き継がれる資産が含まれます。

そこで歳入歳出のみの説明では資産と負債(ストック)などについて以下の疑問が残ります。

  • 借金残高はどの程度あり、これからどのくらい返済しなければならないのか
  • 借金は将来返済しなければならず、借金などを除いた収支の状況(財務業績)はどうか
  • インフラや公共施設などの資産は何をどのくらい持っているか
  • 資産が老朽化していないか(老朽化していれば建替や修繕などお負担が予想されます)
  • 資産と負債のバランスはどうか
  • かつて夕張市が破たん状態となったように財政状況になる心配はないか

 

新地方公会計制度

歳入歳出決算の限界といえる資産と負債(ストック)についての状況を把握し、市民への説明責任を補完するために、公会計改革が進められています。

そこで総務省に研究会が設置され、平成12年の「地方公共団体団体の総合的な財政分析に関する調査研究会報告書」(自治省(現総務省))に基づき、ストック情報開示の試みがなされました。

そして、平成18年に「新地方公会計制度研究会報告書」(総務省)、平成26年には「今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書」(総務省)が発表されました。

 

これらの報告書によって、自治体においても民間企業と同じように資産・負債の概念を取り入れ、

経営成績(財務業績)を正しく理解するとともに将来世代に引き継ぐ資産・負債の状況をより正しく開示することが求められることになりました。 

 

「新地方公会計制度研究会報告書」(総務省、平成18年)では新地方公会計の目的は以下の通りとされています。

地方分権の進展に伴い、これまで以上に自由でかつ責任ある地域経営が地 方公共団体に求められている。そうした経営を進めていくためには、内部管 理強化と外部へのわかりやすい財務情報の開示が不可欠である。したがって、 新たな公会計制度整備の具体的な目的は以下の点にある。

1 資産・債務管理

2 費用管理

3 財務情報のわかりやすい開示

4 政策評価・予算編成・決算分析との関係付け

5 地方議会における予算・決算審議での利用

総務省、平成18年、p5)

 

特に「インフラや公共施設などの資産は何をどのくらい持っているか」については、従来、公有財産台帳というものが作成されていましたが、

公有財産台帳は自治体が持つ資産を網羅的に記載しておらず、また、建物の面積などの物量の記載に留まっているものでした。

「何を」「どのくらい」持っているかを補完するため、平成26年の「今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書」(総務省)では、資産の状況をより適切に把握する「固定資産台帳」の作成を必須とした「統一的な基準」(統一基準)と呼ばれる会計基準が導入されました(これに基づく本格的な開示は平成28年度決算から)。

 

一度、お住まい・ご勤務の自治体のホームページで「公会計」や「財務書類」などと検索して頂き、新地方公会計の取組を見ていただければと思います。

 

参考書籍

地方財政と公会計について詳しく知りたい方は次の書籍が参考になるかと思います。


「入門 地方財政」(林宏昭・橋本恭之、中央経済社、2014年)

難易度★★☆☆☆
地方財政の入門書です。
地方財政の入門書として読みやすさ、内容の深さのバランス良し。

 

「入門 公会計のしくみ」(馬場英朗・大川裕介・林伸一 編著、中央経済社、2016年)

難易度★★☆☆☆
狭義の意味の公会計(いわゆる新地方公会計制度)だけでなく、地方財政、国の会計、公監査、内部統制、国際動向など広義の公会計についての入門書です。参考までに章立てを紹介します。

大学教授だけでなく、公認会計士などの実務家との共著。 

第1章 財政と予算(林 伸一)
第2章 国の会計(石崎一登)
第3章 地方自治体の会計(大川裕介)
第4章 公営企業等の会計(石崎一登)
第5章 公監査の機能と仕組み(金 志煥)
第6章 公会計改革の動向(岡田健司)
第7章 貸借対照表の読み方(有馬浩二)
第8章 行政コスト計算書等の読み方(中川美雪)
第9章 独自方式を採用する地方自治体(大貫 一)
第10章 パブリック・アカウンタビリティ(大川裕介)
第11章 公会計情報の活用(横田慎一)
第12章 官民協働と市民参加(金 志煥)
第13章 公契約とコスト(馬場英朗)
第14章 公共ガバナンスと内部統制(道幸尚志)
第15章 公会計の国際化(守谷義広)

 

「公会計改革の財政学」(小西砂千夫、日本評論社、2012年)

難易度★★★☆☆

地方財政学の権威による財政学と公会計についての書籍です。

財政の健全化のための公会計の役立ちなどについて書かれています。

地方交付税制度や財政健全化法などこれまで地方財政をリードしてきた研究者による解説で読み応えがあります。