【監査】自治体の内部統制と監査
内部統制と監査の関係
前回は自治体の内部統制導入の記事を書きましたが、反響も多く、内部統制へのみなさんの関心と不安の大きさが伺えました。
今回は自治体の内部統制と監査について紹介します。
筆者は、今回の自治体への内部統制の導入が将来的には監査制度の改革も想定したものと見ています。
自治体が監査(特に外部監査)を受けるためには、まずは業務上のミスが起こりにくい体制の整備やルールを整備し、それを守るという体制、つまり、内部統制の整備が前提となります。
外部監査人が自治体の監査をしたとしても、そもそも自治体側にあるべき業務ルールがなければ監査の拠り所がありません。
逆に内部統制がしっかりしていれば、その自治体はしっかりしているのかなという心証が得られ、監査が効果的・効率的に進みます。
自治体監査制度の現状
現在、自治体の監査制度として監査委員会や包括外部監査などがあります。
イギリスでは、上場企業と似たような制度として自治体はそれぞれが公表する財務書類について公認会計士等による外部監査を受けなければなりません。
このように先進の諸外国では、自治体が公表する財務書類、つまり、税金の使い道と財政状況について諸外国では会計の専門家による外部監査を受けなければなりません。
しかし、日本では監査委員会があるものの、会計の専門家でないことも多く、また、実際に監査実務を担当する職員は自治体職員であり、監査にとって重要である専門性と独立性に疑問があります。
また、包括外部監査では外部の専門家による監査が行われますが、監査対象は特定のテーマを決めて行われ、通常、決算を対象とした監査ではありません。
このように現状の自治体監査制度は決算に関して外部専門家による監査が行われていないという問題点が指摘されています。
自治体監査制度の将来
自治体の監査制度の問題点と将来的な方向性を検討するため、総務省で研究会が平成24年に設置されました。大学教授や公認会計士など監査の専門家等によって議論がなされました。
この研究会による検討結果、平成25年に将来的な自治体監査制度についての研究報告書が出され、内部統制の整備とともに監査・会計の専門家による外部監査制度の導入を検討することが記されました。
今回の自治体への内部統制導入は大きな流れの一部であり、将来的には外部監査制度改革が行われるものと思われます。
(なお、現在は公会計改革が進められており、これについては別の記事で紹介します)
参考書籍
自治体の監査制度について詳しく知りたい方は次の書籍が参考になるかと思います。
「公監査」(鈴木豊、同文館出版、2008年)
難易度★★★☆☆
自治体監査の権威による書籍です。
公監査は入門といえばこれ。